この青のもとに

― 大海人皇子を想う ―


青は恐ろしい

吸い込まれそうだ

青い空に



青は恐ろしい

吸い込まれそうだ

青い海に



すべてのことは 些細なことだ

青に紛れる 光の粒だ

それでも生きて

何が出来たか



今は眠ろう

この青のもとに


(C) 2010 Yuuhi


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大海人皇子はどんな人だったのでしょうか。
命が尽きる時、思い描いたのは何だったのでしょうか。


自身がやり遂げたことへの満足感と、 叶わなかったことへの諦めと、
両方が入り混じった気持ちだったのかもしれません。


彼はこの時代の政治家としては成功者です。
戦に勝ち、多くの豪族の支持を得て大王となり、
内政でも外交でも改革をやり遂げ、
現人神(あらひとがみ)と崇めさせることにも成功します。

しかし、それが大海人自身の幸せだったのでしょうか。
彼が若い頃に思い描いた未来とは
大きく異なってしまっていたはずですから。

特に、敬愛した兄、葛城皇子とはすれ違いのまま別れ、
結果的には兄が遺した新しい都(近江京)を捨て、
その政治体制も壊してしまいました。


本当は兄と協力して、兄のもとで補佐をする。
そして共に理想の国家を築くのが、彼の夢だったはずです。

だから、兄に謀反の疑いを抱かれた時、
悔しいと言うより、悲しかったのではないでしょうか。

その悲しみを越えて、政治に邁進し続けた。
大海人皇子は本当に心の強い人だったのです。