翡 翠

     何を葬り 手にして 残せる
     私の腕がもう少しだけ長く
     すべてを包めたなら
     不安を 焦りを しこりを取り去る
     魔法を掛けてあげる事も出来た


 吉野の山は静寂に満ちていた。枯葉がカサカサとざわめく他は、梟が時折不気味に叫ぶばかり。里人すらほとんど立ち入ることのない場所ゆえか、一つの明かりも見られない。冷たい風に晒されて、葛城皇子は身震いを感じた。震えを誤魔化すように空を見上げる。月のない漆黒の夜、満天の星は冷たく輝く。
「鬱陶しいほどの星明りだな」
「今宵は新月ですので」
 半歩下がって立つ鎌足からは、素っ気無い返事が戻っただけだった。
 葛城はむっとして振り返ったが、そこにあった鋭い視線に言葉を失くした。
 暗くて陰気な目だ。鎌足の人柄をよく理解している葛城でさえ、その瞳に湛えられた闇には慣れることができない。
 その目を"姑息な狩人の目だ"とからかったのは蘇我入鹿だった。
 葛城は入鹿本人をよく知らなかったが、鎌足とは旧知の仲だったはずだ。仲は良くなかったらしいが、お互いの実力を認め合える関係だったと噂で聞いている。
 その目で"狩られた"時、入鹿は何を思っただろうか。鎌足は何を考えていたのだろうか。否、何も考えはしなかっただろう。突然の襲来、必死の襲撃。何も思う暇などなかったはずだ。
 朽ち果てた庵を前にして思う。
 今回も互いにとって突然の襲撃であれば良かったのに。あれこれ考える暇もなく、ただ結果だけを淡々と受け入れたかった。
 葛城の心中を知っているのか、鎌足は静かに口を開く。
「今、あの方は一人でいます。お行き下さい」
「私が? 鎌足が行くのではないのか?」
 人が住めるのか怪しいほど粗末な建物を精鋭の兵が取り囲んで、葛城や鎌足が動くのを待っている。庵を守っていたわずかな者は引きずり出され、あるいは自ら逃げ出し、中に残るは主のみ。数日前に主人となったばかりの若い僧がいるばかりである。
 その僧の名を古人皇子。ついこの間まで次期大王の地位を約束されて疑いもなかった異母兄。
 彼の強力な後ろ盾であリ、家族同然でもあった蘇我氏総本家は滅び、古人は頼るべき者をすべて失った。わずかに残された者と自らの命を守るため、古人が日嗣皇子の地位を返上し、出家して吉野へと去ったのはつい先日。
 そして今宵、無力で孤独な元大兄は謀反の罪で最後の砦を取り囲まれている。
「なぜ私が行かなければならないのだ。母が違うとは言え、彼は私の兄だ。私に兄を殺せと言うのか?」
「血が繋がっているからこそです」
 激昂する葛城に、鎌足は普段通りの口調で告げた。
「これから先、あなたが大王となるまでに多くの血を流すことになるでしょう。その怨みを乗り越える覚悟をつけていただきたい」
「鎌足、貴様は私を愚弄する気か!」
 葛城は思わず鎌足の胸倉に掴みかかった。
「覚悟など、とうの昔にできているさ。蘇我を倒し、大王中心の世を作る。そのためには血を流すことなど私は厭わない。現に、私はあの男に真っ先に斬りかかったではないか。その私に覚悟がないと申すのか?」
 しかし、鎌足は動じなかった。真っ直ぐに葛城を見上げる目には一点の迷いも見られない。
「あなたは鞍作の何をご存知でしたか」
 心を読まれた気がして、葛城はまた言葉を失った。
 何も知らなかった。
 蘇我鞍作大郎入鹿は葛城の幼少時から両親に重用されていた人物であり、自覚した時には倒すべき敵だった。親しく接した時機などない。彼自身を知る機会などあるはずがなかった。
 だが、鎌足は違う。どんな形であれ、若い頃を共に過ごした好敵手。それを自らの手で……
 思い出した。入鹿の息の根を止めたのは誰だったのか。
 自分ではない。葛城がヒステリックに叫ぶ母に直訴している間に、入鹿の首に刃を当てたのは鎌足だった。彼は長年の好敵手に自ら引導を渡した。
 それが嬉しかったのか辛かったのか、冷静すぎるこの男はまったく感情を見せない。
「今度は私に倒せと言うのか?」
 鎌足は何も言わない。瞼を下ろし、更に半歩下がる。
 兄をその手で倒さなければ、あなたの覚悟は示されない。そう言われた気がした。
 葛城は唇を噛み締めると、無言で鎌足に背を向けた。
 粗末な庵はなす術もなく、そこに佇んでいる。中で待つ人物の姿をそのまま表したかのよう。
 重い足に精一杯力を入れて、一歩を踏み出した。
 途端に、過去が脳裏を走り向ける。
「お前が葛城か。私の弟なのだね」
 小さな葛城に嬉しそうに駆け寄って来た異母兄。実のきょうだいがいなかったせいか、葛城や間人、大海人をとても可愛がってくれた。
 もちろん古人は蘇我氏総本家で育っていたから、葛城の里で育っていた自分達とはあまり会えなかった。時折、兄がやって来るのを楽しみにしていたのは誰だ。誰よりも古人を兄として慕っていたのは、自分ではないのか。
 彼が入鹿を兄と慕っていると知って、妬みを覚えたのはいつだったか。帰らなければ、と言う兄に駄々をこねて、館に無理に泊まらせた。葛城のたびたびの我侭に、戸惑いながらも、兄は精一杯応えてくれた。
 兄弟の情を持っていたのは幼い頃だけではない。間人が古人の后になる予定だと聞かされた時、憤りながらも「あの人ならば」と納得さえした。それくらい大切な人だったのに。どうしてこんなことに。
「駄目だ」
 走灯馬のように過ぎった思い出を振り払い、葛城は深く息を吸い込んだ。
 心の内を嘆くことなど許されない。引き返すことなどできないのだから。
 葛城は懐を探った。吉野へと発つ前、古人を討つと告げに行った時、なぜか間人が持って行って欲しいと言って聞かなかった簪(かんざし)。何故こんな物を、と問うても、妹は大きな瞳に涙をにじませながら、唇を噛み締めるばかりだった。
 髪飾りにしては鋭過ぎる刃先が銀色に輝いて、葛城の心を一層落ち着かなくさせた。
 雑念を振り払うように首を振って、簪を懐に戻す。
 無事に戻らなければ。葛城を待つものは大きい。新政権の構築、新しい国づくり。そのすべてが実質的に葛城の肩にかかっているのだから。
 剣の重みを確かめて、葛城は今にも崩れ落ちそうな入り口を潜った。
 踏み入れてすぐ、たった一間の庵室。探すまでもなかった。暗闇の中、奥に座る人物がゆっくりと顔を上げる。
「お前が、来たのか」
 確実な死を前しているのに、その声にはいささかの恐怖も感じられなかった。ほんの少しだけ孤独の気配を強くしただけ。
 葛城は無言でもう一歩、また一歩と踏み出した。星明かりが屋根代わりの茅の隙間から差し込んで、彼の白い顔を浮かび上がらせている。
 そう言えば、入鹿も肌の白い男だった。常陸の国出身で浅黒い鎌足とはそんな所も違って、二人を比較する時の格好の話題になっていたくらいだ。でも、総本家以外の蘇我氏出身者は格別に白いというほどではない。おそらく、入鹿や古人の祖母に当たる物部氏の娘から受け継いだ特徴なのだろう。
 陶器のように滑らかな顔は青白くはなっていたけれども、少しも張りを失っていなかった。黒い僧衣との対比のせいで、余計に際立って見えるほどだった。
 その長い髪もまた艶を失っていない。出家したはずだというのに、やはり古人は剃髪を拒んだのだ。飛鳥にいた頃のように結い上げることもせず、肩先から絹糸のように零れ落ちている。
 髪を切るはずがなかった。入鹿と揃いの漆黒の髪。一目で血筋だとわかる容姿を古人は捨てることなどできない。
 この男の心はどこまでも入鹿のものなのだ。入鹿が死んだところでその事実が変わることなど決してない。
「あの男が来るのかと思っていた」
「鎌足は来ない。私が殺す」
「あの男にそうしろ言われたのか?」
 黙れ、と叫びたかった。
 死が怖くないのか。あの冷静沈着な入鹿ですら、死の間際には往生際悪く逃げ回ったというのに、この余裕と静けさはなんなのだろう。
 優しいだけの異母兄にいつこんな度胸が備わったのだろうか。
 葛城は鞘を持ち直し、古人に見せ付けるようにゆっくりと剣を引き抜いた。
 古人の表情はまったく変化しない。
 奥歯をギリッと噛み締めて、葛城は鞘を投げ捨てた。重みのある金属特有の鈍い音が響く。
「命乞いをする気力すら失ったか」
 それでも視線も動かない古人に、嘲笑うように言葉を投げ付けてみるが、何の反応もない。
 まるで生きていないようだった。息をしているだけで、生きる気力のない人形。操ってくれる入鹿を失って途方にくれる傀儡は、自らの糸を体に絡ませて沈黙している。
 葛城は剣を振り上げた。あまりに反応のない古人の表情を歪ませたくて、ふと思い付いた言葉を口にする。
「これで終わりだ。娘の末路も見られずにな」
 瞬時、古人の眉が寄った。
 そうだ、これが見たかったのだ。
 憎しみを顕にして自分を睨む顔を。どうにもできない無力さに打ちひしがれる姿を。
 しかし、その両方ともを見ることは叶わなかった。
「な、何で……」
 古人の端正な顔に浮かんだのは、間違いなく哀れみだった。漆黒の瞳ははっきりと葛城への憐憫を浮かべていた。
 なぜそんな目で見る。今そこにあるのは恐怖と屈辱でなければならないのに。
「やめろ。そんな目で、私を――」
 見るな、と続けたかったのに言葉にならない。その間にも静かな瞳は哀れみを注ぎ続ける。
 抱えた剣の重みが葛城に告げた。殺れ、早く。それが成すべきことだ、と。兄と慕ったこの男を、この手で殺さなければならない。それは逃れられない定め。
 どうせ成すなら早い方が良い。そうだ、淡々と結果を得なければ。それこそが真の大王に求められる器なのだから。
 自らに言い聞かせるようにして、柄を握る手に力を込めて、一気に振り下ろした。
 しかし――――
「くそっ、なぜ……」
 古人の首に落としたはずの剣は、完全に虚空を薙いでいた。長い髪先をわずかに舞わせただけ。
 愕然として、葛城は剣を取り落とした。震える手は拾うこともできない。
 足も力をなくし、ガクッと膝をついた。
 情けなさ過ぎて顔が上げられない。覚悟を決めたはずなのに、このていたらく。鎌足にどんな冷たい目で見られるかと思うと、やけくその笑いがこみ上げて来た。
 古人も嘲笑っていることだろう。自分を殺そうとした癖に、何もできない弟の情けない姿に。悔し過ぎて涙が零れる。
 と、頬に指が触れる。
 冷たい感触なのに温かな気配。幼い頃そのままに優しい仕草。止め処なく溢れる涙を幾度も拭い、散らしてくれる。
 おそるおそる顔を上げれば、そこにあったのは何も変わらない兄の姿だった。嘲りも憤りもない、静かな優しさの中にほんの少しの憐憫を含ませていた。
 嗚咽が込み上げて来た。
 泣いてはいけない。頭ではそうわかっているのに、留めることができない。
「あ、義兄上……」
 葛城は倒れこむように、古人の肩に顔を埋めた。
 そして泣いた。息を潜め、唇を噛み締めて、声を漏らさぬようにして。
 古人は動かなかった。憎いはずの葛城を振り払うことなく、その涙を受け止めていた。
 随分経ってから、躊躇いがちに腕が伸ばされた。ゆっくりと宙を舞って、迷いながら下ろされる。その手の平は葛城の震える背に置かれていた。少しずつ力を込めて、中途半端に抱こうとする。過酷な運命を選んだ、哀れな異母弟を。
 温かくて、同時に冷たい抱擁だった。昔のように力強く抱き締めてはくれない。一瞬たりとも、ただの兄弟に戻ることはできなかった。
 二人を隔てるものはあまりに大き過ぎる。
「あなたを兄と思わなければ良かった」
 こんな形で古人を失うのなら、彼を兄として愛すべきではなかった。そうすれば、こんなに辛い思いをせずに済んだのに。
 嗚咽交じりの言葉に返ったのは、いつも通りの静かな声だった。
「葛城、私は悔いていないよ。何一つ」
 葛城の兄である事実も、葛城に兄として慕われた過去を。己が葛城を弟として愛しんだ日々も。
 何も後悔していないと微笑んでいた。
 この人はこんな時でも微笑めるのか。
 葛城は少しだけ顔を上げて、その笑みを見つめ続けた。諦観と孤独を浮かべた、悲しい笑みを。
 彼はすべてを失い、今はその命さえ捨てようとしている。
 すべてを奪ったのは葛城だ。葛城が奪い、追い落とし、そして今殺そうとしている。
 それなのに、古人からは憎しみの欠片すら感じられない。憎いはずなのに、深く怨んでいるはずなのに。どうして――――


     枝にわかれた旅路の向こうで
     沈んだ心 繕いながら笑う
     あなたの痩せた頬に
     戸惑い 眸を逸らして置いてく
     諦めてしまったのは わたしだった


 遠くで山鳥の鳴き声。禍々しい梟の叫びは、いつの間にか聞こえなくなっていた。夜明けが近いのだ。
 早く吉野を下りなければ。葛城にはやることが山ほどある。この国の有り方を変えるために、自分が真の大王となるために。
 葛城のために命を懸けてくれた者がいるのだから。その期待に報いるために、自分の理想を叶えるために、立ち止まることはできない。
 葛城の決心を察したかのように、古人は緩やかな抱擁を解いた。
 姿勢を正し、真っ直ぐに葛城を見詰める。
「これからもこういうことはあるのだろうな」
 一夜が明けようとする今、古人の声はますます静けさを増していた。
「そのたびにお前は多くの憎悪を身に受けるだろう。その怨みを、憎しみをすべて背負おうと思うな」
「……なぜです。すべて私が背負うべきものです。私が殺すのですから」
「独りでは耐え切れまい。お前を支えようとする者がいるのだから、独りで苦しむことはない」
 古人の言う通りだ。葛城の傍には鎌足がいる。憎しみや憤りの数々を彼と共有していくことになるのだろう。
 辛い道となるだろうが、決して孤独ではない。
 ただ一つ、今日の件を除いては。
 鎌足が乗り越えろと示唆した、兄殺しの罪以外は。
「私は怨んでいない」
「……義兄上」
「お前を憎むことなど、私にはできないよ。お前は私の弟だもの」
 その言葉は率直過ぎて、葛城は何も言えなかった。
 古人はそんな異母弟の姿をしばし焼き付けていたが、やがて静かに瞼を下ろした。
 葛城は目をこすって、大きく息を吸った。今まだに収まらない嗚咽をどうにか堪えて、剣を拾おうと視界をずらす。
 大きくて無骨な剣は板床に転がったまま、鈍く光っていた。鈍器のようで切れ味の悪い木偶の坊。人を殺すには何太刀も浴びせなくてはならない。
 死を覚悟したこの人に、痛みの苦しみを味合わせたくなかった。静かに逝かせたかった。切れ味の良い鋭利な刃で。
 思い当たったのは懐に抱いていた簪。間人が無理にでも持たせようとしたそれは、無事を祈るお守りにしては鋭利過ぎた。まるで刃物のように白く光る。
 間人は知っていたのだろうか。葛城が古人をその手で殺すことを せめて苦しまないように死なせて欲しいという、彼女の願いだったのだろうか。
 葛城は震える指で簪を構えた。
 古人は動かない。その唇は青褪めてはいるけれど、穏やかな微笑みを形作っていた。
 その心では誰と話しているのだろう。この世に遺す娘とだろうか、それとも先に逝った入鹿を想っているのだろうか。
 葛城は白い首筋に浮かぶ青い管を目で探した。
 あの時、痛みに転げ回る入鹿を楽に死なせてやろうと、鎌足がそうしたように。
 すっと一筋、刃を滑らせる。


     いくつの出会いを さよならで塗り替えるのだろう
     小さく頷く わたしはただ無力で


 古人は目を閉ざしたまま、微動だにしなかった。
 ただその首から薄く血が滲んで、すぐに噴出すように飛び散って、彼の白い肌を汚した。漆黒の髪も粗末な僧衣も、すべてが赤く染まっていく。
 上体がぐらっと動いて葛城に倒れ掛かった。
 その体を抱きとめた時、自身の体から何かが抜けていくのを葛城は感じていた。
 葛城の手を、髪を、衣を染めていく血は心の奥までも汚していく。
「葛城皇子」
 いつの間にか背後には鎌足の気配があった。
 一晩中、彼もまんじりともせずに待ち続けたのだろう。
「よく、成し遂げられました」
 お前がやれと言ったのだろう、と皮肉を返したかったが、できなかった。
 口を開けば慟哭を抑えることができない。
 鎌足が膝を折る気配がした。そして、板間に額を当てて拝礼する気配。
 古人への礼だろうか。葛城に覚悟を付けさせてくれたことへの感謝の表れを示したつもりなのかもしれない。
 それとも、詫びなのだろうか。無欲な彼を皇位継承の醜い争いに引きずり込み、死にまで至らしめたことへの。
 どちらでもいい。
 何をしたところで、幼き頃の幸せを取り戻すことなどできない。
「この山に葬る」
「はい。そうなさるのが宜しいかと」
「誰にも邪魔されぬ所だ。安らかに眠れるように」
 抱きかかえた兄の体は驚くほど軽かった。
 血を失ったせいで、白い肌はもはや生物のものとは思えない。
 怨んでいない、憎んでもいないと言い残して逝った兄の境地は、既に人のものではなかったのかもしれない。神仏のように清らかな心でこの世を去った。

     遠くへ翔び発つ 新しく開いた扉へ
     別れの痛みを 輝く宝石へと変えて
     ふたりが重ねた日々を 失くさないでいて
     あなたが消えてく 眩い季節の中へ
     軌跡を描くために


 廃屋を一歩出ると、むせ返るような血の匂いを湿った緑の香りが拭う。
 人里離れた吉野の山は静かに朝を迎えていた。高い杉の幹が朝日を遮り、光と闇の調和した不思議な世界。
「鎌足、私はもう迷わない」
 決心はついた。
 目的のために非情になれる覚悟。
 それを向ける相手が愛しき者であったとしても、もう決して躊躇することはないだろう。
「真の大王になってみせる。私自身の力で」
「はい。お供いたします、どこまでも」
 葛城皇子、二十歳。
 多くの宿敵を葬り去り、絶対的な権力を手に即位するまでの長い道のりの始まりだった。

(C) 2008 Yuuhi

参考:魔女ノ安息地>歴史街道>古代史>シリーズ考察 中臣鎌足>Cすべてを奪われて 古人皇子 

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(後書き)
古人大兄皇子の人生について、いろいろと思うことがありました。
彼が何の罪で死ななければならなかったのか、 納得しがたいものがあります。
何もせず、権力者の傀儡なることが死に値する罪なのでしょうか。
草壁皇子の場合もですけれど、ただ"生きる"ことが何故許されなかったのでしょうか。
何一つ望まなかったのに。
ただ、"人"として行きたかっただけなのに。
後の世に生きる私達は、どうしても権力者に目が行きがちです。
その陰で悲劇に追いやられた人々がいることを決して忘れてはいけないのだと、改めて心に刻みました。

題名は天野月子さんの名曲『翡翠』から。
古人から葛城への想いと重なるように思えました。作中に歌詞の一部を使用させていただきました。

 出典 天野月子作詞・作曲 河野伸編曲『翡翠』 ポニーキャニオン
      ・ Single『翡翠』2005/2/16
      ・ Album『A MOON CHILD IN THE SKY』2005/9/21
      ・ Album『デラックスカタログ』『カタログ』2006/11/15

いつもお世話になっている八尋様が拙作をお読み下さり、
古人大兄皇子の素敵なイラスト『沫雪の』(古代・飛鳥)を描いて下さいました。
正しく「従容として死に就く」ことを覚悟して残された日々を生きる、泰然とした古人の美麗な姿が拝めます♪

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(C) 2010.01.11 Yuuhi