スカーレットメトロポリス

   〜緋色の虚空都市〜

あとがき


 この話を最初に書いてから、もう5年近くが経ちます。

 当時の予定では、今の私は何らかの社会貢献ができる人間になっているはずだったのですが、現実には何もできず。何だか自己嫌悪だけが積もります。
 そんな思いとの葛藤を繰り返しながらの編集作業でした。
 最近は少し開き直っています。私一人の力なんて大したことがなく、それは歳をとろうが社会的地位を得ようが大差ないのだと。
 でも、たくさんの人の力があれば必ず変わるものもあるはず。そう信じて、過去の私はこの話を書いたのだと思います。でも、自分自身の立場とは重ね合わせていなかったようで、今更のように気が付きました。

 と言う訳で(?)、皆様どうか夕陽さんの陳腐な策略に巻き込まれてくださいませ。こういう世界が現実のどこかに有り得るのだと心に留めていただくことができれば、とても嬉しいです。
 拙いお話に最後までお付き合い下さり、有難うございました。

 以下、補足説明をあとがきに代えさせていただきます。

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参考文献:(順不同)

☆「グローバル経済と現代奴隷制」
  Kevin Bales (原著), 大和田 英子 (翻訳)
  凱風社, 2002/10
…最も参考にした文献。犯罪事例だけではなく、アラップ教授の取材スタイルや現地の対応についても、引用に近い形で使用させていただきました。

★「ケーススタディ子ども買春と国外犯処罰法」
 ジェレミー シーブルック, ECPAT ストップ子ども買春の会 (著)
 明石書店, 2001/12/4

★「子どもと性被害」
  吉田 タカコ (著)
  集英社, 2001/08

★「アジアの子どもと買春」
  ロン オグレディ (著)
  明石書店, 1993/3/15

※ この類の本は明石書店が良い文献を多数出版しています。

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キャラクターモデル:(順不同)

「 ワリス・アラップ 」
: ワリス・ディリー
 東アフリカのソマリア出身のスーパーモデル。慣習として5歳で女子割礼を受けさせられた上、13歳で60歳男と結婚させられそうになり、父親から逃げ、幸運にもロンドンへ。現在はアメリカでモデル業の傍ら、女性器切除廃絶の活動中。たくさんの理不尽に苛まれながらも最低の状況から這い上がり、更に今度は過去の自分と同じ苦しみを抱える多くの少女のために戦い続けて言います。

 彼女の著作「砂漠の女ディリー」(Waris Dirie (原著), 武者 圭子 (翻訳), 草思社, 1999/10)を読んだ時、私は高校生でした。彼女さんが苦しい思いをしていたのは当時の私よりずっと年下の頃。なんでこんな小さな女の子が苦しまなければならないの、と悲しい気持ちが募った一方、彼女が幸運にも恵まれ、モデルへの道を歩んでいく過程には胸をドキドキさせました。
 諦めずに生き抜くことの大変さ、それを越えて掴んだ栄光の輝き。
 私は今でも彼女に惹かれ続けています。

「 ラルフ 」と「 エーリヒ 」
: シュミット・ファンデルハウゼン・フォン・シューマッハ
: エーリヒ・クレーメンス・ルーデンドルフ
 いずれもアニメ「爆走兄弟Let’s&Go WGP」のドイツ国代表選手。幼馴染の仲良しコンビという設定で、性格や物言いなどを含めてお借りしました。
 あえて彼らをモデルにしたのは、私がとても好きなキャラだったということもありますが、それ以上に二人の容姿にありました。
 シュミットはゲルマン人らしい白い肌にこげ茶色の髪、瞳は高貴さを漂わせる濃紫。一方のエーリヒは褐色の肌に灰色の髪、透明感の無い水色の瞳。同じ国籍でありながら、まったく人種が違うことが伺われます。
 またシュミットは資産家で、苗字に"フォン"がつくことから貴族の末裔なのでしょう。そして、二人は出身地すら同じではありません。近所だったから仲良くなった、とかではないんですね。

 アニメでは先にエーリヒが登場して、その後シュミットがチームリーダーのミハエル達と共に来日していましたが、エーリヒ以外のメンバーはいかにも白人ゲルマン系で、どうにもエーリヒの存在が異質に見えたものです。(彼がチームメイトに対して敬語を使うのも一因でしたが。)
 ですが、シュミットとエーリヒは幼馴染であり親友なのです。人種やおそらく育ちにも多少の違いがあって、しかしその垣根を乗り越えて親友、選手としてはライバルで盟友として認め合っている。とても素敵なことだと思います。制作スタッフがどのような意図でこんな設定にしたのか、一度じっくり聞いてみたいところです。


 いつもお世話になっている八尋様から、ラルフとエーリヒを描いた「イエローローズ」をいただきました。こちらからどうぞ。
 八尋様、素敵な絵を有難うございました!
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 以上です。どうも有難うございました。

 AD2009年 夕陽


                     終
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