図らずも奈良市の観光地巡り紀行(薬師寺・阿修羅展・春日大社)(2017.4.29)


今でこそ「飛鳥・奈良時代のマニアです」と自他共に認める私ですが、
学生時代に奈良市に通っていた頃は大して興味が無かったのよね、実は。
卒業して後に、興福寺と春日大社が「藤原氏の藤原氏による藤原氏のための寺社」だと知りまして、
「なぜ行かなかった!?」と自分に突っ込みました。
しかし興味を持っていくのと、有名だから何となく行くのとでは、全然価値が異なるはず!

というわけで(?)、今年も晶さんと行って参りました、毎度恒例史跡巡りの旅。
薬師寺 → 興福寺 → 春日大社というTHE☆奈良の有名観光地巡りの旅となりましたが、
我々にとって知名度は二の次であります、ハイ。
お目当ては興福寺で開催していた「阿修羅展」で、そこを中心にもう2箇所回ってきました。

【薬師寺】
突然ですが、あれは2012年のことでありました。
「阿倍ちゃん縁の地巡り」で奈良市を横断した晶さんと私は、夕方に唐招提寺まで来たものの、
薬師寺の拝観時間には間に合わず……止む無くバスで傍を通りました。
あれから5年、執念実り…嘘です、晶さんが「あの時行けませんでしたね」と仰って、ようやく思い出した私です。
なんと薬師寺は8:30から拝観できるそうですよ! さすが寺! さすが修行の場!

近鉄なんばで晶さんと待ち合わせて、近鉄線で西ノ京駅へ。薬師寺は駅のすぐ近くでした。
いや、「薬師寺に来やすいように電車の駅を近くに造った」が正しいのでしょう。
メインの伽藍の前に、駅に近い方の「玄奘三蔵院伽藍」を拝観します。

実は何があるのかわからず足を踏み入れたのですが、玄奘三蔵の像があったのと、
平山郁夫画伯が描いた大きな大きな「大唐西域壁画殿」がありました。
これまで平山画伯の絵のイメージと言うと花や水、砂漠や夕空、史跡など柔らかな感じが強かったのですが、
こちらの絵は雄大な山々と紺碧の空という、力強い印象の絵でした。

続きましてメインの白鳳伽藍へ。金堂を見て5年前の知識が蘇ります。

屋根の上のシャチホコみたいなやつは鴟尾(しび)でございます。お久しぶり、5年ぶりね。
魚が水に飛び込んでいる姿=火災除けのおまじない、なんですって。木造建築には必要ですね。

金堂を横目に、まずは大講堂へ入ります。横長に大きな建物で、中にいっぱい像がありました。
真ん中には弥勒三尊像。夕陽さんは仏像の種類に詳しくないのでGoogle先生に聞きました。
弥勒菩薩というのは、「お釈迦様の入滅後5億7,600年後に、釈迦の救いから漏れた人を助けに来てくれる仏」ですって。
社会保障から漏れた人を支援するボランティアみたいなものかしら?
その後ろの空間には釈迦十大弟子の像が左右5体ずつあり、その間には釈迦の足跡を刻んだという仏足石。
仏足石はとっても大きいです。釈迦って巨人?
釈迦十大弟子はそれぞれの特徴がわかりやすかったです。
「説法第一」の人はよく喋りそうでしたし、「多聞第一」の人はよく話を聞いてくれそうでした。

さて、金堂に行きます。
元々、薬師寺は大海人皇子【天武天皇】が皇后【鵜野讃良皇女】の病気平癒のために発願されましたので、
金堂におわす本尊は病気から人を救ってくれる薬師如来です。
大海人皇子の死後、鵜野讃良皇女【持統天皇】と孫の軽皇子【文武天皇】が飛鳥の地に寺を完成させ、
710年の平城京遷都に伴って、今の場所に移されたそうな。
薬師如来像も両脇の日光菩薩・月光菩薩も、綺麗に磨き上げられていました。

金堂の脇には東塔と西塔。残念ながら東塔は修復中で、覆いが掛かっていました。
数年後には東西の塔が並び立つそうです。今回は西塔のみ。美しいです。
(最初、西塔は修復中と書きましたが、正しくは東塔でした。つまり、この日に見たのは西塔です。
永遠乃様、ご指摘頂きまして誠に有難うございました!)


この後一度薬師寺の敷地を出て、「興福寺の方に向かいましょうか」かとUターンしたところで
こちらの建物へのルートに気がつくことができました!

こちらは「東院堂」といいまして、吉備内親王が亡き母の阿閇皇女【元明天皇】の冥福を祈って
発願建立されたものなのです。図らずも吉備様に縁のあるものに出会えるなんて!
心を籠めてご挨拶して参りました。
母の冥福を祈るために建てたお堂を、吉備様が敢えて薬師寺の敷地内に建てたというのは興味深いです。
母亡き後、お母様に懐かしい家族の下で過ごして欲しいという気持ちがあったのかな。
あるいは、おじい様とおばあ様、そしてお兄様の加護に縋りたいという気持ちもあったのかな。
彼女の考察を執筆中の身としては、妄想が膨らみます。

思わぬ収穫を得て、次の目的地の興福寺方面へ。
薬師寺でもらった地図とスマホの地図アプリを駆使して、珍しく(本当に珍しく)迷わずにバス停へ辿り着きます。
そしたら、あまり本数が無いバスがすぐにやって来ました! なんて運が良いこと!!
近鉄奈良駅近くの有機野菜を使うカフェで美味しいランチをいただいて、こちらも大満足!
私の学生時代は街がとても寂れていたのですが、おしゃれなお店もいろいろできて、随分変わりましたね。

【興福寺(阿修羅展)】
さてさて、楽しみの阿修羅展へと参りましょう。
学生時代に一度だけ阿修羅像を観に行ったことがあります。その時はガラスケースに入っていました。
今回は特別展ということで、他の像を含めた作成当時の並び方を予想し、再現しているそうです。
阿修羅像を含めた群像が安置されていた興福寺西金堂は、光明子【光明皇后】が母の橘三千代の供養のために発願したとか。
経緯を知ると、群像に籠めた光明子の祈りをを読み取りたくなってきますね。
「阿修羅像」単体が有名ですが、阿修羅は「八部衆」というインド神話の8人の神様の一人だそうです。
この展覧会を宣伝するテレビ番組では、光明子が「亡き息子が生きていたら、こんな風に成長していっただろう」
という過程を、この八部衆の像に映させたという説をやっていました。
その番組とは別に、私はちょいと予習しまして、この群像について書かれた論文を読んでおりました。
各像の傾きは、見る人の目線にちょうど合うように造られているそうです。
亡き息子だけではなく、母や父など光明子にとって目を合わせたい、懐かしい人の姿を映しているのかなと思いました。

【春日大社】
さて、最後の目的地である春日大社へ。
「藤原の氏神を祀るこの社に、我らが乗り込まなくてどうする!」というわけで長い、
本当に長ーい参道を歩いていきますと、我々二つの妨害を受けました。
一つは雨! 先程まで晴れていたのに突然暗くなってきて、生温かい不穏な風が吹いてくる……
慌ててお天気アプリに尋ねてみると、「近くで大雨が降ってるよ」とのこと。
呪いだ。鎌足さんの呪いだ、絶対に(注:史跡関係の都合が悪いことは、全て鎌足さんの呪いにします)
戻ろうかとも相談したのですが、折角ここまで来たし、もう少し進んでみようと、
戻ってくる人々の流れに逆らって進んでいくと、いつの間にか晴れてきました。(呪いに勝った!)
しかし第二の妨害は、晴れていればこそやって来る。それは鹿!
あいつら、観光客はおやつ(鹿せんべい)繰り出し器だと思っているのです。
観光客と見るや否や、てくてくやって来て、ぴょこん、ぴょこんと御辞儀を繰り返す。
そうすると観光客が歓声を上げて、鹿せんべいを買ってくれることをDNAレベルで知っているのです。
本当に策士ですよね。さっすがは藤原氏の神社の神獣だけあります。
(ちなみに、奴らは奈良公園で飼育されているので、別でしっかり餌を貰っています)
今回は休日ということもあり、他の観光客が御辞儀詐欺に引っかかっている間に、我らは通り抜けることができました。
オフシーズンだと「何かちょーだい」と奈良公園中を追っかけ回されることになりますから、ご注意ください(←経験者)

神獣だけあって、手水の水も鹿から出てきます(普通は龍ですね)


さてさて、春日大社と言えば藤ですね。皇室に巻き付いて、皇室を篭絡した藤原氏のシンボルであります。
一番奥の御本殿にも藤棚がありましたが、そこはそそくさと通りまして、我らが向かうは「萬葉植物園」。
その名の通り、万葉時代の植物がたくさん植えられている植物園です。
そして、藤の花が今盛りなり。20品種・約200本の藤が栽培されています。
満開ではなかったですが、少し甘い藤の花にうっとりしました。
ついでに他の植物も、と進みまして、万葉の和歌に因んだ植物がたくさん植わっているのを発見。
大伴家持、笠女郎などなどお馴染みの歌人の歌が書かれたプレートを見ながら進んでいくと、
とあるプレートの前で、二人して驚愕する我ら。
橘諸兄
あぢさゐ、つまり紫陽花を詠んだ歌なのですが、問題は作者です。
「橘諸兄」って書いてあります!
「えー、諸兄さんってこんな歌を詠んでたの!?知らなかった!」と晶さんと大はしゃぎ。
ひとしきりはしゃいでから、こういうところで反応する辺り、さすがは私達だと大笑いしました。

と言っている間に、またまたツボを付かれる代物を発見。
まさかの鎌足さんの数少ない歌が紹介されている!!
鎌足 歌
詠まれているのは、さなかずら(写真後方の植物です)。
昔、私も考察したことがある歌でしたが、こんなところでお目にかかるとは吃驚です。

えー、色々と興奮するところを間違えた気もしますが、とてもとても楽しかったです。
晶さん、今回も有難うございました! また一緒にお出かけしましょう!!

おまけで、鹿の写真をどうぞ。
いや、確かに可愛いのよ。それは認める。ただし、近付いて来なければね。
奈良 鹿

(「図らずも奈良市の観光地巡り紀行(薬師寺・阿修羅展・春日大社)」おわり 2017.8.8)
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